希望の音楽を生み出す、クレバーと純粋さ
ふふふ、ふふ~ん♫
気がついたら、つい口ずさんじゃってる音楽ってありませんか? 私の場合、もちろんそれは好きな歌手の曲であることが多いんですけど、たまにふと何かのBGMが頭の中に残ってることもあるんですよね。
さりげないながらも存在感があるというか。音楽の世界にも「名脇役」がいるってことなのかな。
映像作品や演劇のBGMや番組のジングルなどを手がける他、自らも舞台に立ち役者としての一面も持つ多才な男性です。
脳性麻痺を抱えながら、日々ポジティブに自分のやりたいことに向かって歩みを進めていく彼には、周りの人を幸せにするパワーがあふれているように感じます。それでは皆さんも一緒に井谷さんの世界に飛び込んでみましょう。
自分にインストールされていた「好き」を形に
「作曲」ってやったことありますか? 楽器や歌は学校の音楽の授業でみんな習いますけど、曲を作る方法って私はぜんぜん知りません。
普段から耳にしているステキな音楽って、どうやって生み出されてるんでしょう?
今から話をうかがう井谷さんは、どうやってサウンドクリエイターとしての道を歩み始めたのかな。きっと小さい頃からピアノとかバイオリンとか習ってて、感性を磨いていったとか・・・?
「僕も最初は皆さんと同じようにゲームや映画の音楽を楽しんでいる立場でした。自分でも作ってみたいなと思って楽器を練習したり作曲にチャレンジしたけど難しくて・・・でも、ちょうど高校を卒業するくらいの頃が、世の中でボーカロイドが流行し始めたタイミングで、パソコンがあれば音楽が作れる環境が徐々に構築されていったんです。
それで改めて自分もやってみたいと思って、体験版の作曲用ソフトを使ってみたら、意外といい感じのものができて、そこから独学で技術を身につけていったのが始まりでした」
そうだったんですか! いかにも今の時代っぽいきっかけですね。私が想像していたのとはちょっと違ったけど、「誰でも、何にでもなれる」ってすばらしいことだと私は思います。
でも、いくら創作の環境が整っていたとしても、誰もがいきなり納得のいくものが作れるとは思えないんですよね。井谷さんには生まれ持ったセンスがあったということかな?
「僕の中に、これまで聞いていたゲームや映画の音楽がインストールされていたから作れたんだと思います。自分が『いいな』と思ったものを形にしていったというか。BGMは割とシンプルなものが多いので作りやすかったのかもしれませんね」
仕事はちょっと難しいくらいがおもしろい
そうかあ、井谷さんの中に蓄積されていた『好き』があったから、スムーズに作品づくりが進んだということなんですね。
最初はソフトの操作も手探り状態だったそうですが、徐々に慣れていったんだそうです。そのうちにタッチパネルで操作できるものや、実際の楽器を扱う感覚で演奏できるツールも開発されるなど、音楽づくりの環境もどんどん進化していったんですって。
こうして作曲の技術を身につけていった井谷さんは、サウンドクリエイターとしての道を本格的に歩み出すことに。現在はフリーランスとして活動中です。お仕事をしていて大変だと感じる事はあるのでしょうか?
「スケジュールががっちり決まっている案件は少し難しさを感じることもありますけど、基本的に曲を作るのが好きなのでそこまで苦にはなりませんね。それに、ちょっと難しいくらいの方がおもしろいんですよ、仕事は」
少しいたずらっぽく笑う井谷さん。大変な状況でも前向きに楽しもうというスタイルが垣間見られたように思います。
『UENOYES 2020』でのライブパフォーマンスのために作った長編MV
目的に向かって計画的に動くクレバーさ
経験のない状態からサウンドクリエイターとして活動するまでスキルを伸ばしていった井谷さん。そのチャレンジ精神はさらに彼自身を突き動かします。ある大きなイベントに携わるために、精力的に動き回ったのです。
「2021年の東京パラリンピックの開会式に出演できるチャンスがやってきて、それを実現させるために努力しました。
きっかけは2015年に東京で行われた音楽のコンテストで優勝できたことでした。
その成果が地元・鳥取県の知事にまで知れ渡ったんです。県では同じ時期にパラリンピックに向けての文化的な活動を進めていこうという動きがあって、頑張り次第ではパラリンピックに関われるということがわかりました」
なるほど、大きな舞台が身近な目標として手が届くところまでやってきたわけですね。それを達成するためにどんな活動をされてきたんですか?
「先ほどのコンテストで優勝したことで、『東京で活躍してみたい』という気持ちが強くなり、2016年から4年ほど東京に拠点を移して色々なイベントに参加するなど、パラリンピックにつながる活動を一生懸命やってきました」
その努力が報われ、東京パラリンピック開会式への出演が実現したのですね。
さらに現在は活動の幅を広げ、2022年9月に行われたパリ・コレクション(パリコレ)のオープニング映像に使用される音楽を担当されたんだそうです。世界的なファッションショーの演出に携わるなんて、スゴいの一言ですよね。
それにしても井谷さんのお話を聞いていると、目標に向かって地道に努力しながらも「何をすれば達成できるか」をしっかり考えられているクレバーさも感じるんですよね。そのあたりはご自身でも意識されているんですか?
「いつも思っているのは、『どんなことでもゲームのように楽しむ』のが大事だということ。何でも簡単にできるだけじゃおもしろくないですからね。常識にとらわれずに、自分の目標のために有効な手段を考えて物事を進めていくことに楽しさを感じるんです」
直感的に音楽ソフトを操り、サウンドを生み出す「天才肌」な姿と目的から逆算してアクションを起こす「理論的」な顔。その両面が井谷さんの魅力なのかもしれません。本当に、独自の世界を持っている人だ!
お互いの目標に向かって協力できる人が理想
今後もさらに活躍のフィールドを広げていきたいという井谷さん。具体的に何か計画はあるんですか?
「そうですね、僕自身がやってきた音楽の作り方や演奏のノウハウを子どもたちに教えたり、『音楽は好きだけど楽器がうまく使えない』と諦めている人たちに、音楽の作り方を教えるような活動もやっていきたいですね。
みんなが音楽クリエイターとして作品をつくれる世界になって、音楽がひとつのコミュニケーションツールになるような社会が僕の理想なんです」
なるほど。誰もが音楽を通じて自分を表現していくことができれば、楽しい世界になりそうですね! ちなみに、子ども達とふれ合うのは好きですか?
「はい、子どもは好きですよ! 今も乳幼児を対象にした音楽イベントに参加することがあるんですけど、みんな本当に自由なので接していて楽しいです」
きっとそうだと思ってました。井谷さんのポジティブなエネルギーを、子ども達をはじめたくさんの人に振りまいてくださいね!
ちなみに、現在パートナーをお探し中とのこと。大切な人ができたら、どんな関係性を築いていきたいですか?
「どちらがリードするとか引っ張られるとかじゃなく、ともに人生を『共闘』できるパートナーになれればいいなと思っています。お互いの目標を達成するために協力し合えるような。相手の目標のために手伝えることがあれば、僕も役立ちたいと思っています」
常に「やりたいこと」に対してアクションを起こす井谷さんらしい考え方だと思います! 例えば休みの日は一緒に過ごしたいとか、それぞれの時間を尊重したいとか、希望はありますか?
「それも日によって違うでしょうから、お互いの気持ちを大事にしながら決めていけばいいんじゃないかな。『どうすれば相手が楽しめるか』を考えるのが幸せじゃないですか」
本当にその通りですね。決めつけることなく、相手の気持ちを考えることが一番だと私も思います。また井谷さんの温かい人柄に触れることができた気がしました。
音楽や舞台など多彩なイベントに出演されていますので、気になった方は、井谷さんのサイトにてスケジュールをチェックしてみてくださいね!
公式サイト
https://www.yutaitani.com/home
(2022/11/6 取材)
■PROFILE
kogare#07:井谷 優太
年齢 37歳
生年月日 3.24
血液型 O型
出身地 鳥取県
星座 牡牛座
話せる言語 日本語、日常会話_英語
特技 マッハのスピードで音楽がつくれる
好きな映画 バック・トゥ・ザ・フューチャー
尊敬する人 坂本龍一
愛車 スーパーウィルチェア
必殺技 快眠音楽!w井谷さんのそのほかの作品もぜひご覧ください
幻想的な音楽
https://youtu.be/cp6F1jNNFjw
物語的な音楽
https://youtu.be/6GPgAGctCqA
パリで行われたファッションショー
https://youtu.be/QIanqovojjg
▼井谷さんと出会いたい方はこちらからお問い合わせくださいー!